四季おりおりの話題:1月

四姑娘山(6250m)の山や花などの自然の美しさはかなり知られていますが、四姑娘山の有るギャロン(女王谷)地方の特異な文化について知る人は未だ少ないでしょう。 ギャロン "rGyalrong"の語源はチベット語のギャルモロン"rGyalmorong"で「女王の谷」を意味します (中国語では嘉絨"Jiarong"と呼んでいます)。
この女王谷はヒマラヤ横断山脈を流れる主として大金川や小金川等の大渡河上流域の古代名称で、古代から多くの民族が移住して先住民と融合を繰り返した地域です。 移住の中でも特に興味深いのは、紀元前後に隋書(隋時代581〜618年の歴史書)等に女国の名を残したシャンシュン国の一族がボン教と共に移住して来た事です。 この一族は女王谷で繁栄し唐書(唐時代618〜907年の歴史書)等に東女国の名を残しました。 シャンシュン国はチベット全域に跨って長く栄えましたが吐蕃王国に滅ぼされてその文化の殆どが失われました。 しかし女王谷には今もシャンシュン文化の一部が継承されていて壁画や領主の館跡等にその面影を残しています。 壁画にはシャンシュンで湖の女王と呼ばれていた土地神の一種で、左手に生命の酒を満たした壷を持っています。
朝焼けの四姑娘山主峰6250m
スコラジダと呼ばれ女王谷を保護する山神の一つとして崇められました。
また集落の彼方此方に散在する石作りの高い塔は世界的に注目され、UNESCO世界遺産に登録する運動が進められています。 (四姑娘山は2006年7月にUNESCO世界自然遺産に登録されています)
シャンシュン時代からチベットでは山と湖の神々によって土地が護衛されているとする神話が伝承されていますが、女王谷でもその神話が生きていて、四姑娘山はその神々の一つとして崇められています。

制作:四姑娘山自然保護区管理局 特別顧問 大川健三