四季おりおりの話題:2月

当地では太陽暦の正月も祝いますが陰暦(農歴)の正月を祝う人が大勢です。2006年の陰暦正月は1月28日でしたが、1週間位前からふる里へ帰る人でバスターミナルが混雑し始めました。 成都の西門バスターミナルはアバやガンゼの少数民族自治州へ帰る人や正月休みを楽しむツーリストで混雑します。バスはこれらの人を乗せ4000m以上の峠を越えてふる里へ向かうのです。 公的な正月休みは1週間ですが、遠くへ帰る人は2週間、田舎ではこの時期は暇な事も有って3週間位休みます。
四姑娘山の有るギャロン(女王谷)地方は古い歴史を持つ集落が多く、ギャロンチベット族に古代から継承されている行事が正月にとり行われます。 正月初日には囲炉裏で柏木の葉を焚きながらボン教(脚注)のお祈りを捧げ麦の籾を撒きます。その後、近くの廟に出掛けてお香を焚き、廟を左回りに何度も廻りながら祈ったり五体投地します。 廟の中では太鼓やラッパを鳴らしながらボン教のお経を唱えたり、法螺貝を吹きながら柏木の葉を焚いて1年の安全や豊穣を祈ります。近くの広場では伝統的な舞踊も披露されます。 廟に集まる村人の中には成都へ出稼ぎや勉強に行っていた人も多く居て、久しぶりに会って世間話が花を咲かせます。
村外れに有る廟
正月だけでなく、いつもお参りする人とお香が絶えません。
四姑娘山主峰6250m
里に春が訪れても山は未だ冬です。
女王谷の標高2000m位の所では、この頃になると畑の畦道にタンポポや菜の花なども咲き始め、山の斜面のそこかしこに梅の花も見られるようになります。 そして正月休みが明けると畑の土起こしと種蒔きが始まります。ここでは陰暦正月は正に年の初めなのです。 Tussilago sp.
(2400m)

春一番に咲く花の1つです。

脚注: チベット文化圏ではチベット仏教が多数派です。しかし女王谷では古代からボン教が多数派で、関連する文化が残っています。

制作:四姑娘山自然保護区管理局 特別顧問 大川健三