四季おりおりの話題:3月

春分の頃になるとギャロン(女王谷)では陽射しが随分と暖かくなり、標高2500m前後の谷間では新緑が萌え洋梨の白い花が咲き誇ります。 そして独特の様式を持つ石積みの民家の集落と相まって美しい風景を見せます。女王谷の民家の様式は幾つか有りますが、最も美しいものが丹巴に有ります。 3〜6階立ての民家の屋根は平で四隅を尖らせます。それに加えて密集した集落を作る事が多いため、遠くから見ると中世欧州のお城を思わせます。 厚い外壁には漆喰で厄除けの模様を描き、木製の窓枠やテラスの壁はカラフルな塗料で装飾します。 また神棚を置いた部屋や客間の壁や天井には伝説上の動物や法螺貝や花等の絵を一面に描きます。
石積みの民家の集落
春になると梨や林檎の花が一面に咲きます。
石積みの塔
一方、女王谷の各地には石積の高い塔が立っています。基部の一辺は10m前後で高さ15〜50m位、形状は四角や八角等です。
この塔は長い歴史の中で色々な用途に使われて来ています。元来は祭壇や神権の象徴だったようですが、後に狼煙台や砦、財産を格納する倉庫、 神への奉納(縁起の良い数の子供が出来た時等)として建てられるようになりました。 祭壇や神権の象徴として建てられた塔は辺鄙な所へ行かなければ見れませんが、狼煙台等として建てられた塔は自動車道路から彼方此方に見えます。 この塔が最も良い状態で数多く残っているのも丹巴です。丹巴の民家や塔は日本の下記の書籍でも紹介されています。
   「東チベット・丹巴甲居村の石積み建築」住宅建築 2005年2月
   「チベット寺院・建築巡礼」大岩昭之 東京堂出版 2005年9月

制作:四姑娘山自然保護区管理局 特別顧問 大川健三