BC323年、インダス河畔に疲れ切った表情の男が佇み上流に見入っていました。
遥かなマケドニヤから東征してペルシャを破りインドにまで達したアレクサンドロス(アレキサンダー大王)でした。
アレクサンドロスは傍に控える腹心の将軍に声を落としてつぶやきました。
「この河の源に世界の中心が有り黄金の国が栄えていると言う。
私はそこへ辿り着きたい。しかし神の意思はそれを許さないようだ・・・」。
アレクサンドロスは自分が遠からず死ぬ事を予期し、将軍に遺志を継がせてインダス源流へ向かわせました。
まもなく故郷の家族を恋しがる兵士達が反乱を起こし、アレクサンドロスはインダス河を後にしなければなりませんでした。
アレクサンドロスの遺志を継いだ将軍は部下と共に反乱から逃れてインダス河を遡りました。
ある時は土豪に阻まれて迂回し、ある時は土民に襲撃されて部下を失いました。
しかし将軍はついにチベット高原西部のインダス河源流に至りました。
そこには森と草原に覆われたシャンシュンと呼ばれる豊かな国が有り、世界の中心とされるカイラス山が聳えていました。
この国は女王が治めていました。女王は石積みの館に住み、その中央には天界を模した9層の塔が有りました。
9層の塔は黄金で飾られ陽を浴びて輝いていました。そして館の中にも多くの黄金が溢れていました。
また、王を神格化し山や火などの自然を崇拝する信仰(ボン教)が確立していました。
女王は遥かなマケドニヤから辿り着いた将軍から話を聞き、アレクサンドロスの東征を後世に語り継がせました。
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